憲法9条について

 国民投票法案が参議院で可決された。審議不十分でおかしな付帯決議付きで、国民の意思をいかに反映しないようにした、限りなく国民を馬鹿にした法案である。
 国会の権威、参議院の良識も地に落ちたものである。反対のポーズをとり続けた民主党も非難されるべきである。

 NHKが法案の成立を報道するときに、必ず追加して「今後憲法改正論議が活発になることが予想されます」と言うが、その根拠がどこにあるか示さない。こんな放送局に金を払っているかと思うと腹が立つ。

 さて憲法9条である。その1項は世界共通であるのでこれを改悪したら世界の笑いものになるだろう。(不戦の誓い 1:反戦老年委員会参照)
第九条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 不戦条約は1928年だから、それ以降は戦争はなかったなんて事を言う人はいない。起こった戦争はすべて自衛戦争と言うことになっているはずだ。第2次世界大戦はファシズムに狂った国に対する自衛戦争である。ハルノートで脅迫しようとあくまでも自衛戦争なのである。
 朝鮮戦争は北朝鮮の侵略であり、ベトナム戦争は北ベトナムの侵略なのである。湾岸戦争はイラクの侵略であり、今回のイラク戦争は大量破壊兵器を持つならず者国家が必ず行うであろう侵略である。そして戦争はそれに対する防衛戦争なのである。
 これが不戦条約を守ると言うことであり、役には立たないが、建前上これを無くす事はあり得ないことだ。

 9条第2項が「世界遺産」にするのならそれに値するユニークな条項だ。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 NHKの憲法特集番組で「前項の目的を達するため」は日本で作った部分だと言っていた。この変更はあまり議論されずに決まったそうだ。
 極東委員会ですでにこれに関して議論がされていたそうで、日本の再軍備を招く危険な修正だと議論されていた。これに答えて挿入されたのが次の条文だ。
第66条 
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。

 今まで日本国憲法を読んでも、軍隊のない国でなぜ文民なのか分からなかったが、これで疑問が氷解した。(NHKもいい番組をやるではないかと分裂症気味だ。私がそうなのではなくNHKが分裂症なのだろう)

 極東委員会で危惧されたとおりの議論が日本で起こり、解釈憲法により自衛隊と言う軍隊を持つことになる。文民条項は軍部の支配は防げるかも知れないが、たとえばアメリカのように好戦的な政治家の支配の場合、やはり好戦的な国になるのでどこまで効果があるのか疑問だ。

 さて戦後の安全保障について簡単に歴史をおさらいしよう。

 アメリカ軍は日本を占領し、日本軍を解体した。アメリカ政府の政策に則りGHQは日本を非武装の国にしようとし、憲法案を提示した。極東委員会も同じ方針だった。
 アメリカはかなり早い時期に方針を転換し、日本の再軍備を画策した。旧日本軍の軍人を集めて準備をさせたりしていた。少なくともサンフランシスコ平和条約締結時には明確な要求をしていたが、日本は復興もままならずそれを拒否していた。

 共産圏との冷戦のなか、日本を防衛し、アメリカの世界戦略を実現するには極東での(日本での)軍事力は不可欠であり、協議の結果日米安全保障条約の締結となった。
 この条約は日本にアメリカの基地を置き、日本地域における軍事力を確保したものだ。日本は基地(土地)を提供し、アメリカは軍事力を置く。限りなく片務的な条約である。

 日本は軍事的には独立しておらず、この状況に不満な勢力は右にも左にもいたと思う。しかし昭和26年時点では、日本の状況からみて再軍備などは経済的に不可能だったし、アメリカ軍がいなければ朝鮮半島、台湾、そして日本も侵略されていたかも知れない。事の是非を越えて現実的な選択だったと思う。

 その後もアメリカの再軍備要求は続く。60年安保では「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」に改訂された。この条約は日本にも防衛義務があるとされたことである。
第3条
日米双方が、憲法の定めに従い、各自の防衛能力を維持発展させることを定める。

 また双方の義務として
第5条
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

  「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」により日本は9条2項により制限がかかっていると自民党政府も主張してきた。少し時代がさかのぼるが池田特使・ロバートソン国務次官補会談(1953年10月5日-30日)に詳しく説明されている。


 日本の防衛はアメリカの核の傘の下で実現されてきたことは明白である。アメリカは日本を軍事パートナーとして参加することを要請してきたが日本は拒否を続けてきた。拒否の理由は憲法9条であり、改憲阻止を主張し続けた社会党などの政党及びその支持者達の勢力である。
 その結果日本は戦後戦争をせずに防衛を果たしてきた。GNPの1%は自衛隊に使っているが経済規模に対し少ない軍事費のおかげで日本の経済発展が可能になった。
 戦後の日本を成功と呼べば、それに大きな力を与えたのが憲法9条であったことは否定できないと思う。

 今までの話はこのようなことだが、日本は今後どのような道に行けばいいのか。今後政権側が改憲論議を仕掛けてくるだろうが、どう考えていけばよいのか?

 自民党の主張する道は、軍隊を認定し、国連の認定があれば当然のこと、認定が無くても国際貢献との名の下に海外派兵をするものである。いわゆる普通の国宣言だ。職業軍人、志願兵、徴兵まで憲法上は可能にするだろう。

 護憲派の主張はとりあえずは9条維持なのだが、具体的な道が不明確だ。
 一つは伝統的な非武装中立論だ。北朝鮮のようなならず者国家の存在を考えると非武装は国民の支持を得られていない。
 もう一つが現状維持だ。建前としての自衛軍ではなく、本来の意味の自衛軍をもち、国際貢献はあくまでも経済貢献で通す行き方だ。
 湾岸戦争時に「日本人の血を流せ」と脅迫されたことが小沢代表のトラウマになっているようだが、同様の政治家も多いと思う。そんなことは受け流していればいい。

 憲法現状維持は消極的な決断ではない。アメリカの軍事力を前提として成立する政策であることは確かだが、当分アメリカの軍事力が優越していると考えれば、可能な選択でもある。
 少なくともアメリカと共同で世界軍事制覇に乗り出すことは、得策ではないと判断する。

 従って憲法9条改定には反対の立場である。
 なお自民党改憲案は国民主権と国民の基本的人権をないがしろにするものだから、この面でも絶対反対である。9条よりこちらの方が重大ではないかと思っている。

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