就職における年齢制限について

 求人票には年齢制限の欄がある。たいていは○○歳以下だ。たまには60歳以上とかのも見てみたい。
 アメリカでは履歴書に年齢を書く欄は無いらしい。日本では年齢制限は合法のようだ。但し道では正当な理由をつけなければいけないようだ。例えば定年が60歳なので熟練に5年かかるとすれば最低55歳以下、教育分を企業が元を取る為に5年追加して50歳以下と言った要領だ。そのほか社内の年齢分布を理由にしている場合もある。
 これらの理由が正当、いわれがあればこれは「区別」であって差別ではない。しかし本当に正等なのだろうか。人間には個人差が大きく、60歳でも十分体力もあり、経験が備わっていることを加味して若年者よりよっぽど能力があると認められる人もいる。定年制のない自由業、芸人、企業経営者は年齢には関係なく活躍して居る。労働者にだけ年齢制限をつけるのは不当ではないかと言う主張は当然である。

 しかし日本国憲法では
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
と年齢について言及がない。おかしな話だがアメリカでの年齢制限撤廃は1967,8年に制定されたので日本憲法にないのは当然かもしれない。(あれっ)
  
 先ほどの例でもあったように定年制との関連には気がついていた。ネットで資料を探すと「雇用における年齢差別禁止に関する研究会中間報告」を見つけた。経済企画庁総合計画局のもと開かれた研究会で堺屋太一が長官の頃だ。
 その一部を引用する。
3 年齢にとらわれずに働くことができる社会の実現のための前提条件
(1)賃金・処遇制度
○ 年齢による差別を禁止し、個人が年齢にかかわらず働くようにするためには、人事管理制度は従来の年功的な賃金・処遇制度を見直し、成果に応じた賃金・処遇制度となる必要。また、そのためには仕事の評価を公正に行うことが重要になる。
具体的には職務の範囲の明確化とともに評価結果、基準の開示が必要。
○ 定年制が禁止となって退職管理が困難になるため、新卒一括採用に代わる新たな採用方法も検討していく必要。また組織の刷新という観点から労働者の自発的な退職の仕組みを作る必要がある。アメリカの場合、企業年金を工夫することによって自発的退職を促しているが、我が国では特に中小企業において退職一時金、退職年金の額が少なく、高齢者の就業意欲が高いのでインセンティブとなるかどうか不明。引き続き検討が必要。
○ 年功的な賃金体系から成果に応じた賃金体系とする場合、企業は労働協約や就業規則の変更を行うこととなるが、特に就業規則を変更する場合には変更の合理性が必要。これまで賃金など労働者にとって重要な労働条件を変更する場合には変更の「高度の必要性」を要求していたが、今後仕事の成果に基づく賃金体系の導入が要請され、これが広く普及してくれば変更の合理性が認められやすくなることも考えられる。いずれにしても変更する際には制度自体の透明性と労働者が納得できることが重要。
(2)雇用保障
○ これまで我が国では職業生涯の途中で企業を退職した場合には再就職先が極めて限定されることから、判例によって企業が解雇という手段を用いることができる場合は著しく限定され、その結果労働者は定年まではかなり強く雇用を保障されてきた。年齢差別の禁止を実現して、定年制を廃止するためには定年制以外の他の雇用調整の手段を認める必要があり、雇用保障の緩和方法について立法による解決も含めて議論していく必要。
○ 年齢差別を禁止すれば、企業と労働者間での労働条件に関する紛争が増加することが予想される。これは一義的には企業内での話し合い、苦情処理システムの構築等によって解決すべきであるが、これに失敗した場合などに備えて裁判所による救済の前に簡易、迅速な解決方法として行政機関による調停制度も検討する必要。また、裁判になった場合であっても、アメリカの例を参考に原告の立証責任の軽減措置の定式化も必要。
4 必要な政策と意識の転換
○ 雇用の場面において年齢差別を禁止するためには雇用政策のあり方も大きく変わる必要があり、特に年齢によって助成の区分を行っている政策との整合性が問われる。
○ 成果主義が強まることによって、低い賃金でしか雇用されない労働者層が存在することが予想されるとともに、雇用の流動化によって失業の頻度が高まることも予想される。従って、これに応じたセイフティー・ネットのあり方についても検討が必要。年金については引退年齢の決定に中立的な制度とする必要。
○ 高齢者に対する意識についてもステレオタイプな見方はなくしていく必要。
非常に視野が広く一つ一つの検討に血が通っている。今のわけの分からない研究会や懇談会とは雲泥の差である。
 これで見ると年齢制限はそれに限定される問題ではなく、労働環境全般の問題を引き寄せる氷山の一角のような問題だ。しかし、企業の倒産やリストラや若年層の離職や正社員になれないなど再出発が必要な人がこれだけ増加すれば、放置できない問題になっていることも確かだ。
 今までの終身雇用、年功序列、それを前提とした給与体系は就職の年齢差別撤廃とは相容れないことがこの報告でよく分かる。逆に言うとアメリカではここで必要とされている雇用形態であったからできたと言うことであろう。

 欧米各国の状況は雇用における年齢差別禁止への内外の取組状況に記載がある。アメリカでは
アメリカにおいて、年齢差別禁止が可能となった背景としては、以下の点が指摘されている。
①労働者の採用と解雇が伝統的に自由であり(随意的雇用の原則)、業績が悪化した場合レイオフ等により比較的容易に労働力を調節できること、
②企業における仕事のやり方が、個人の仕事の範囲と責任を明確にした上で個人単位で仕事を遂行していくこと、かつ、賃金が非年功的で仕事の内容と賃金が対応していること、
③同法制定以前には定年制があったが、実際に定年年齢まで働く労働者はほとんどいなかったことである。
イギリスでは
① 正当な理由なく、労働者の強制的な退職年齢を設定してはならない。ただし、労働者が70歳を超えた場合、使用者は労働者に退職を求めることができる。
ドイツでは
「高齢労働者のパートタイム労働の促進及び早期年金受給の実態改善に関する法律(通称、高齢者パート就労促進法)」が、1996年8月に施行(2000年に法律の有効期間を2009年末まで延長)されている。同法では、事業主が55歳以上の高齢労働者を年金支給開始(通常65歳)までの間、フルタイム就労の労働時間の半分以下のパートタイム就労に移行させ、これにより生じた空きポストに新たに求職者又は職業訓練生を採用し、その雇用を最低4年間(従来3年間)継続した場合に、政府が事業主に高齢労働者の従前賃金の20%を6年間(従来5年間)助成することを定めている。この結果、パートタイム就労に切り替えた高齢労働者は、フルタイム時の約70%の賃金を取得できる。また、同法により規定されたパート労働に24か月以上従事すれば、通常65歳から支給の老齢年金を60歳から受給できる。
フランスでは
年齢が差別的取り扱いの禁止事由とされたことに関連して、年齢による取り扱いに相違があっても、適法な目的、特に、雇用政策上の目的により客観的かつ合理的に正当化され、その目的を実現するための手段が均衡がとれていて必要であるときには、差別とはならないとされた。特に若年労働者や高齢労働者の保護のために、雇用へのアクセスを禁じたり、特別の労働条件を実施することや当該ポストに必要な教育訓練又は引退の前に合理的な雇用期間が必要であることを理由として、採用の最高年齢を設定することは適法とされている

 各国一様ではなく、その国の事情を配慮しているようです。スムーズに行っているのはアメリカだけと言う印象です。

 今の日本で失業者やフリーターなどに職を確保することは喫緊の課題です。しかし年齢差別廃止だけではうまく行かないことはわかりましたが、かと言ってアメリカ型に移行することが本当に良いのか良く考える必要があるでしょう。しかも現在はアメリカ型の中で、企業にとって都合の良いところだけを変更しています。アメリカ型に移行すると言ってもその傾向が是正される保障はありません。
 
 私は従来の制度は基本部分が悪いとは思っていません。国際競争力をつけるために人件費だけを抑制し高物価を継続すれば、格差拡大のもと、低所得層の生活が成り立たなくなるのは当然です。人件費水準も物価とのバランスを取れば落ち着き先もあるはずだし、今までの制度の中で企業にも求職者にも再就職支援を継続すれば問題は解決の方向に行くと思います。上記のような立派な研究会をきちんとやれば解決策は見つかると思います。
 今の政府にそれを期待するの無理かもしれないが。

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