いくつかの全国戦没者追悼式式辞

 全国戦没者追悼式の式辞をいくつか見てみた。
先の大戦が終わりを告げてから今日まで、五十二年の歳月が過ぎ去りました。苛烈を極めたあの戦いの中で、祖国の安泰を願い、家族を案じつつ、戦場に散り、あるいは戦禍に倒れ、さらには戦後、遠い異郷の地に亡くなられた三百万余の戦没者の方々の御心情に思いを馳せ、残された御遺族の深い悲しみを思うとき、今なお悲痛の思いが胸に迫るのを禁じ得ません。ここに心から御冥福をお祈りいたします。

 また、あの戦いは、我が国のみならず多くの国々、とりわけアジア近隣諸国に対しても多くの苦しみと悲しみを与えました。私は、この事実を謙虚に受けとめ、深い反省とともに、謹んで哀悼の意を表するものであります。
 心を打つ式辞、これがスタンダードではないのか?

あるいは
終戦から六十六年が過ぎ去りました。あの苛烈を極めた戦いの中で、三百万余の方々が、祖国を思い、家族を案じつつ、戦場に倒れ、戦禍に遭われ、あるいは戦後、異郷の地に亡くなられました。戦没者の方々の無念を思うとき、今なお悲痛の思いが込み上げてきます。改めて、心からご冥福をお祈りいたします。
 また、最愛の肉親を失った悲しみに耐え、苦難を乗り越えてこられたご遺族に、深く敬意を表します。
 先の大戦では、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えました。深く反省するとともに、犠牲になられた方々とそのご遺族に対し、謹んで哀悼の意を表します。
 これもなかなかのものだ。

 そして
先の大戦では、300万余の方々が、祖国を思い、家族を案じつつ戦場に倒れ、戦禍に遭われ、あるいは戦後、遠い異境の地に亡くなりました。また、我が国は、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。国民を代表して、深い反省とともに、犠牲となった方々に謹んで哀悼の意を表します。
 内容は網羅しているのだが、なんと簡素な。

 これはどうだ。
先の大戦において、三百万余の方々が、祖国を想(おも)い、家族の行く末を案じながら、苛烈を極めた戦場に斃(たお)れ、戦禍に遭われ、あるいは戦後、遠い異郷の地で命を落とされました。いま、その御霊(みたま)の御前(おんまえ)にあって、御霊安かれと、心より、お祈り申し上げます。
 ついにアジア諸国の人々はいなくなってしまった。その代わり御霊(みたま)とか御前(おんまえ)とかおどろおどろしくなってしまった。

さて誰の式辞か記載しよう。順に
平成九年八月十五日   内閣総理大臣  橋本 龍太郎
平成九年八月十五日   内閣総理大臣  菅直人
平成19年8月15日  内閣総理大臣  安倍晋三
平成二十九年八月十五日 内閣総理大臣  安倍晋三
 品格がわかるというものです。

もう一つの焦点も比較しよう。
いま、私たちが享受している平和と繁栄は、かけがえのない命を捧(ささ)げられた皆様の尊い犠牲の上に築かれたものであります。私たちは、そのことを、ひとときも忘れることはありません。改めて、衷心より、敬意と感謝の念を捧げます。
 戦争の惨禍を、二度と、繰り返してはならない。
 戦後、我が国は、一貫して、戦争を憎み、平和を重んずる国として、ただひたすらに、歩んでまいりました。そして、世界の平和と繁栄に力を尽くしてきました。私たちは、歴史と謙虚に向き合いながら、どのような時代であっても、この不動の方針を貫いてまいります。
 もうひとつは
戦後我が国は、焦土の中から立ち上がり、平和を国是とし、幾多の困難を乗り越えて、国民のたゆまぬ努力により目覚ましい発展を遂げてまいりました。

 この平和で豊かな今日においてこそ、過去を謙虚に振り返り、戦没者の方々の尊い犠牲を次の世代に語り継ぐとともに国際社会において、再び戦争の惨禍を繰り返すことのないよう、恒久の平和を確立することが、我々に課せられた重大な責務であります。そして、このことこそが、過去に対する償いとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めることとなるものと信じるものであります。
 誰と誰かは書かないでおきましょう。でも格の違いは分かるというものでしょう。
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