修正資本主義から新自由主義へ

 大きすぎるテーマです。これを論証しながら書ければ、一冊の本で収まらない。しかし、そのデーターを持ち合わせていないので、はなはだ説得力に欠けた話にならざるを得ない。
 しかし、ここで示す荒筋に私は自信と確信を持っている。

 資本主義は弱肉強食といわれていたが、いくつもの修正をされ、進化してきたと思っていた。それが新自由主義なるものに侵され更なる変化を遂げている。私はこれを進歩ではなく弱肉強食の自由主義への回帰だと思っている。その経過を書いてみよう。


 資本主義の下では繰り返し大恐慌が起きた。その際の失業者問題は社会不安を起こし、国家として対策を余儀なくされた。弱肉強食の単なる結果なのだが、社会はそれを許さなかった。
 それへの対処の一つがニューディール政策だ。失業者に職を与え、生活を維持する。福祉政策の最初のものだと思う。
 もう一つの対処がケインズ経済学だ。経済が落ち込みかけたときに、政府支出を増やし、需要をつくり、それによる投資を惹起させることにより最初の支出の何倍もの効果を得る。需要を増やすための減税も同時に行われる。
 日本のバブル崩壊後のデフレ経済立て直しの際に行われた政策そのものだ。日本での取り組みは不発に終わり、新自由主義の勃興へとつながった。

 福祉政策は戦後特に盛んに行われるようになっていった。これにはソ連との冷戦が大きな理由になっていると考える。「社会主義の国家では生活は国家が補償するので安心だ。」と言われてきた。北朝鮮も地上の楽園とされていたし、ソ連の経済成長も著しいものがあり生活も改善されていたはずだ。
 資本主義国で福祉を充実させたのは、社会主義での「安心」に対抗するためだということが大きな理由だと思っている。
 社会主義陣営が崩壊した現在では、資本主義陣営は上記の対抗をする必要は無い。


 高福祉国家はその多くが経済の不振と国家財政の赤字に悩まされた。その原因は国家予算執行上の不正、必要な税をとらなかった事、そしてグローバリゼーションの進展だと思う。

 官僚制度を長期にわたり監督をしなければ、彼らは好き勝手なことを行い、既得権を利用し利益を得る。過去の君主制の行政組織で十分に経験してきたことだ。日本の場合それに政治家がグルになっていたから腐敗は激しい。
 官僚制度を野放しにしてきたことが一つの要因だ。

 国家財政は不況時に赤字に転じる。景気後退による税収の減少と景気対策としての支出増、減税によりさらに赤字になる。
 結果論で言えば、現在では、その政策は景気回復に効果が無いばかりか国家財政の破綻を招きかねない悪政である。景気対策に効果が無いのであれば必要な税をとり、支出を抑えていなければならなかったことは明白だ。
 ケインズ経済学が効果を出さないわけだが、それはグローバリゼーションの進展のせいだ。

 資本主義国家での最初の構造問題とされたのがイギリス病だ。イギリスが過去の植民地経済を引きずり、植民地を失った戦後に経済が成り立たなくなるのはそれなりの理由があると思う。そこに見られるのは世界の工場だったイギリスの産業空洞化だ。
 イギリスの工業生産が外国との競争に敗れ、国内生産が落ち込んだ。イギリスの資本はさらに有利な国に資本を移動し、国内の産業は減少した。
 同時に高福祉国家でもあり、支出は下がらず、また労働組合の力も強く賃金も下がらないから、国際競争力を失っていった経過だ。
 イギリスは最初に金融の流動化を起こしたから、それ以前の植民地経営の遺産も含め、今も金融大国である。しかしそれが国民生活にいい影響を出しているとは思えない。

 イギリスに勝った国はアメリカが最初だろうが、日本の復興がそれを脅かし、アジアの各国がそれに続いた。


 ケインズ経済学が効果をなくしたのは下記の事情のためだろう。 
 グローバリゼーションが進展すれば、政府の支出増を受注する企業が海外企業にもなりうるし、減税して消費を増やしても輸入品の購入に回り国内生産を増やさない結果になる。ケインズ経済学は一国経済学ではないかと思う。それゆえに効果を無くしたのだと思う。

 日本は発展した後、アジアの各国の追い上げで産業の空洞化が起こると言われた。実際に多くの企業が海外に進出し、空洞化が進んだ。しかし日本は重要な高度部品を生産し続けており、いわゆる高付加価値化と労働生産性の向上を成し遂げてきた。またアジアの各国が金融不安で停滞したこともいい方向に向いた。

 グローバリゼーションが進展すれば、後進国と同じ製品を作る産業は、賃金の決定的な差により衰退するから、多くの産業が影響を受ける。それによる不況が構造的なものになり、脱することが出来なくなる。


 先進国がこの状態になれば不況は回復せず、財政赤字は増え続け、ついでに輸入超過の状態が続く。
 ここで登場するのが新自由主義だ。

 新自由主義のキャンペーンの一つが小さな政府だ。
 官僚が使い込んでいる国家予算の無駄遣いを非難し、支出削減を行う。ここまでは正しいのだが、ついでに福祉予算も削ることになる。官僚は抵抗するから福祉予算のほうが削りやすいことに結果的になる。

 次に経済が不況から脱しないのは、企業が自由に活動できないからだと決め付け、本来公正なルールの下での競争としている各種の規制を外しにかかる。これにより起こることは、カルテルなどによる不正な価格決定であり、下請け企業製品の値下げであり、労働者の賃金カットである。
 しばしば国際競争力をつける必要があると理由付けがされる。賃金が圧倒的に低い国とハンディーをつけずに競争することなど到底無理なことなのだが、方法が一つ。賃金を相手国並みに下げることである。
 下請け企業製品の値下げも下請け企業の賃金切り下げによって実現される。

 国内で賃金引下げが実現できなければ、工場を海外に作ればいいだけだ。労働者は低賃金で働くか、さもなければ失業するかの2者択一を迫られるわけだ。
 これが公正な競争ルールを外した自由競争の結果だ。

 労働組合は賃金引下げには強力に抵抗する。日本では企業内組合として設立されていたから、不況の波の中できわめて弱体化してきた。残っていたのは官公庁の組合だ。これには官公庁事業の民営化を行い、根元からの解体を行う。これも賃金の切り下げの手段と見れば分かりやすい。

 企業は税金も出し渋る。税金が高ければ他国に移転するぞと脅迫し、税率を下げさせる。そして不足する税収は国民から取ることになる。


 さて、以上のような新自由主義政策をすれば、企業は必要なときには海外展開をし、あるいは国内での低賃金産業を行い、業績を上げていく。官営産業が民営化されることにより、新たな企業収益が可能になる。これにより企業が発展し税金も増えるが、企業減税のため大きな増にはならない。
 経済指標は大きく改善されるので、不況は脱したとか成長を続けるべきだなどと言われる。

 国家財政は企業納税の増により少しは良くなるが根本的には改善しない。福祉の削減がもっとも大きな効果であり、その他の歳出削減が続くが、やはり赤字体質は続く。そこで国民への増税が必要となる。

 国民への増税がうまく行われれば国家財政は好転する。企業の業績も上がり、国家経済指標は改善する。さらにインフレ、物価上昇政策が成功すれば国民の財産は大きく目減りし、その分の利益も転がり込む。
 増税などにより国家財政も好転するから、新自由主義政策は輝かしい成果をあげることになる。


 だが、このような事態を良い状態というのか?国と企業の状態は良くなるだろうが、国民の状態はどうだ。
 今日本で景気が回復しているはずなのに、なぜ生活が良くならないのか?と疑問が出される。その問いは、はっきり言えばナンセンスな問いなのだ。なぜなら、景気が回復したのは国民の生活が悪くなったからなのだ。もっと言えば、国民の生活を悪くして利益を掠めるのが新自由主義というものだ。

日本でその企みが成功したのはバブル崩壊後だと思う。今から思えばバブルとバブル崩壊とその後の無意味な年月はすべて今もしくはこれから先の新自由主義を発展させる布石だったのではないかと思う。

 あのバブル時期には土地価格は永遠に上昇すると言われた。企業や国民は借金をしてでも土地もしくは土地にかかわる投資をした。国民が浮かれたせいだとされているが、経済の専門家は気がつかなかったのだろうか?そんなことは絶対に無いと思う。彼らは気がついていながら放置し、バブルを煽ったと思う。

 バブル崩壊後、政府は不況対策として減税を行い、地方公共団体も巻き込んだ公共投資を行った。土建屋たちは不良債権の穴埋めにそれを使い、景気回復にはならなかった。減税された収入は中国の急速な発展による中国製品の輸入に消えた。デフレは中国製品の安値が大きな原因だろう。
 この悪政により国家予算は大赤字になった。

 この後いよいよ新自由主義の大合唱になった。日本の資本主義は非常に特殊な資本主義で、高福祉でもないが、企業が従業員や消費者を大切にし、どちらかといえば株主を冷遇してきた。これが一つのバランスとなって新自由主義はなかなか進展しなかったのだが、不況と国家財政破綻の脅迫に、屈した形だ。それがバブル崩壊によってもたらされたのも、彼らの狙いにはまってしまったということだ。

 
 日本は海外依存の国だと宣伝されているが、日本の発展は内需主導だった。外国から石油や食料は買わねばならないが、その率は少ない。日本人は自分たちが作ったものを使い豊かになってきたのだ。
 ケインズ経済学に基づく、高福祉国家はグローバル経済と両立しない。かつて行われていた国内産業保護政策を復活させなければならない。これを大げさに言えば「鎖国をせよ」となる訳だ。

 開発途上国が自由貿易を主張する。農業製品などを買ってくれと言う。代わりに日本の工業製品を買うと言う。それは彼らにとって打撃にならないのだろうか?
 実は、すでに打撃を受けすぎているからこれ以上やっても変わらないのだろう。国内産業はとっくに崩壊しているからもういいのだろう。それよりも売れるものを買ってくれることにより、生活が良くなるということだと思う。

 これを打開するには、国内産業を育成し、保護政策をすることだ。だがネックは国内産業の育成であり、それに必要な資本と技術は先進国の独占物だからだ。
 日本が行うODAが日本に利益を持ち帰ることではなく、その国の産業を作り、その製品をその国で販売できる形に出来るのなら、緩やかでも発展が出来るだろう。
 今の形で自由貿易の形をとっても発展途上国は永遠に発展途上に置かれるだろう。日本が鎖国をすることは彼らにとって不利になることではないし、日本はそれに代わる協力をするべきだ。
 その試みにより、日本および発展途上国は新自由主義の罠から脱することが出来るのではないかと思う。
 

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この記事へのコメント

ロケットの夏
2007年11月26日 18:37
「新自由主義」などという言い方がややこしさを生んでいると思いませんか?この言葉が本来の「自由主義」や「社会民主主義」と相容れない概念である事を、どれだけの日本人が認識しているのでしょうか。
2007年11月27日 22:51
ロケットの夏 さん
この言葉が認識されていないところに、本当の問題があるのでしょうね。ネーミングは何でもいいのでしょうが、メディアが発信しないと認識されないと言うことでしょうね。

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