「戦後レジームからの脱却」について

 「戦後レジーム」と言う言葉。何をさしているのだろう。あいまい戦術を行っている安部首相の言葉だから、分かるはずがないのかも。

 レジームと言えば、「アンシャンレジーム」を思い出す。それは「フランス語で旧体制あるいは旧秩序を意味する言葉」だ。(Wikipedia) 従って、「戦後レジーム」とは戦後日本の体制を意味するはずだ。

 では戦後日本の体制とは何だろう。それまでの体制との違いをイメージして考えてみよう。

 その中心はなんと言っても憲法によって変わった部分、象徴天皇、戦争放棄、基本的人権の付与、国民主権。
 経済体制で言えば、独占禁止法による経済支配の排除、自作農家の保護
 国際体制で言えば、日米安全保障条約によるアメリカとの関係
 軍国主義教育から民主教育
 (本当は国家警察から民主警察)

 これらの体制を安部首相はどうしようとしているのか。脱却するのはいいがどこへ行こうとしているのか?

 国会の議事録からその発言を見てみよう。
衆 - 本会議 - 2号 平成19年01月26日 施政方針演説
今こそ、これらの戦後レジームを原点にさかのぼって大胆に見直し、新たな船出をすべきときが来ています。「美しい国、日本」の実現に向けて、次の五十年、百年の時代の荒波に耐え得る新たな国家像を描いていくことこそ私の使命であります。
 この後政策について語るが、どれが国家像なのか近近の政策なのか判別がつかない。
衆 - 本会議 - 3号 平成19年01月29日
私は、施政方針演説で明確に述べたとおり、国民の働き方、暮らしの向上、教育の再生、そして憲法を頂点とする戦後レジームの大胆な見直し、いずれの課題に対しても、正面から全力で取り組んでまいります。
 どの言葉が「戦後レジーム」にかかっているのか判別しがたいが、「国民の働き方、暮らしの向上」がレジームとは思えない。「教育の再生」はあやしいが、中心が憲法らしい事が分かる。
衆 - 本会議 - 4号平成19年01月30日我が国は、さきの大戦で国内外に大きな被害を与えたという事実に対し、率直な反省の上に立って、半世紀以上にわたって、自由と民主主義そして基本的人権を守り、国際平和にも貢献してまいりました。そして、高度成長もなし遂げました。こうした国の基本的なありようは、今後とも、私たちの手で守り続けていかなければならないと考えております。
 しかしながら、日本を取り巻く環境は戦後半世紀以上を経て大きく変化しており、先輩方が焼け跡の中から築き上げた平和で豊かな日本を引き続きさらに発展させていくためには、戦後の日本の成功モデルに安住していてはならず、今こそ新たな国家像を築いていく必要があると考えております。
 「自由と民主主義そして基本的人権を守り、国際平和にも貢献」は守ると言っている。これらは「戦後レジームの一部なのだが、これは脱却しないらしい。
衆 - 予算委員会 - 2号 平成19年02月01日そして、それと同時に、グローバル化し、あるいは競争していく、そして時には市場原理をしっかりと取り入れていくという中にあって、大切なものは何か、忘れてはならないものは何かということも、これもやはり今もう一度考え直さなければならないんだろうな、こう思うわけでありまして、この戦後六十年間、経済が成長する中で私たちが捨ててきたものは何か、軽んじてきたものはないか。それは、例えば公共の精神であるとか、みずからの生まれた地域や国に対する愛情や愛着、そして地域や社会や国や世界のために貢献しようという気持ち、また道徳心、そうしたものをもう一度見詰め直そうというのが我々の教育再生でもあるわけでございます。
 そうしたことも含めて、全体的に、やはり我々は、二十一世紀にふさわしい日本の姿を見詰めていく中にあって、今までの枠組みにとらわれてはならない、そういう思いでああした表現を、戦後レジームからの脱却、そういう表現を使ったような次第でございます。
 「公共の精神であるとか、みずからの生まれた地域や国に対する愛情や愛着、そして地域や社会や国や世界のために貢献しようという気持ち、また道徳心、」これを教育再生と言うと同時に「戦後レジームからの脱却」へと繋ぐ。ここで、憲法と教育が「戦後レジームの脱却」の中心らしい事が分かる。
衆 - 教育再生に関する特別委… - 2号 平成19年04月20日 昨年の臨時国会におきまして、教育基本法におきましては、約六十年ぶりの改正をなし遂げることができたわけであります。また、税制におきましても、道路財源、これは五十年ぶりの大改正であった、このように任じているところでございます。また、防衛庁につきましては、防衛庁を省に昇格させるという決定については、党においては、自民党においては、岸内閣のときにその方針を固め、そして池田内閣で閣議決定をしたわけでございますが、自来、長い年月できなかったわけでございます。これこそまさに、私は、戦後レジームから脱却をして新しい国をつくっていくための礎づくりではなかったか、このように思う次第でございます。
 教育基本法、防衛省がその礎だと言う。しかもそれが岸内閣から続く話だと言う。岸内閣は1956年に発足し、60年安保の年に退陣した。戦後わずか10数年の事だ。首相にとっての戦後とはわずか10数年の事なのだろうか。それ以降は脱却したいのに出来なかった時間だと言うのだろうか。
参 - 日本国憲法に関する調査… - 12号 平成19年05月11日
 私が今申し上げましたように、まずこの戦後の体制ができた当初、これはまだ占領軍がいる時代に憲法もできたわけでございます。
 そして、教育基本法もでき上がっていきました。我々は昨年の臨時国会において教育基本法を改正をしたわけでございます。これは、言わばこの六十年間ずっとこの改正がなされなかったものが改正されたと言ってもいいんだろうと思いますね。
 そしてまた、例えば防衛庁、この年間の予算五兆円も掛けているわけでありますが、庁という姿にしてきた。しかし、やはりそれを省に昇格させた。これはどういう意味があるかといえば、これはやはり私たちのこのシビリアンコントロールあるいは民主主義の成熟に対する自信なんですね。
 これは、フィリピンに参りましたときに、アロヨ大統領も私にそうおっしゃっていました。安倍さん、日本は防衛庁を省に昇格させましたね、いいことですよと。それは正に日本人がシビリアンコントロールと、そして民主主義の成熟に対して自信を持って、そしてアジアにおいてもその大きな役割を果たしていこうという意思表示でありますから、それは肯定的に私たちはとらえたい、いいと思っていると、こうおっしゃっていた。
 正に今までの観念の殻を打ち破って、やはり二十一世紀にふさわしい日本の姿をつくっていくということこそ、私が申し上げている戦後レジームからの脱却であります。
 また、例えば公務員制度の在り方についてもそうだと、このように思うわけであります。言わば官製談合があったり、あるいは天下りの世界がずっとそのままある意味官製談合の温床として維持をされてきた、そういうものを変えていくということも、官と民の在り方もそうでしょう。そして、先ほど舛添委員と議論をいたしました国と地方の関係を抜本的に考え直していく道州制の在り方もそうだと思います。こういうことをダイナミックに議論をしていく今時期がやってきたということを申し上げておきたいと思います。
 ここで占領軍が作ったレジームからの脱却を意味している事が分かる。強調するのが教育、軍隊である。同じく占領軍が持ち込んだ民主主義、基本的人権は守ると言うところが、ダブルスタンダードなのだが。
 官の支配を脱却しようと言う。道州制もその延長のようだ。官でなければ、何の支配が待っているのだろうか。
 その答えは今審議されている公務員改革法案にある。官から政への移動だ。(政には財を含む)


 ではここで首相が脱却しようとしている「戦後レジーム」について整理しよう。
 日本国憲法では軍隊を強化する事。
 教育では愛国心
 官の支配からの脱却
 の3つがその発言から出た脱却だ。民主主義は脱却しないほうだ。アメリカとの関係も脱却しないほうだ。(占領軍はアメリカ軍であり、占領は駄目で駐留は良いというわけの分からない話なのだが)
 安部首相は自民党の憲法草案をベースにするといっている。そこでは、国民主権と基本的人権を骨抜きにしている。明確には言っていないが、これも「戦後レジームからの脱却」だろうと思う。
 (ここで自由と民主主義だが、自由は強者が弱者を食う経済的自由のことで、民主主義とは様々な圧力をかけ、国民が選んだという形を作る政治体制のことを意味する。国民主権と基本的人権とは似て非なるものである。)

 では戦後レジームから脱却して作る国家像とはどんな国家なのだろう。
 繋いでみよう。

 象徴天皇を抱き、愛国心や貢献する心を持った国民を作る。
 軍隊は強化し、アメリカとの同盟関係も強化する。
 「自由と民主主義」を掲げ、国民主権と基本的人権が危うい国
 新自由主義を続け、格差を広げながら成長を続ける国
 官の支配を脱し、政治(財界)主導体制の国

 象徴天皇以外はアメリカそっくりだ。
 アメリカ占領軍が作った「戦後レジームからの脱却」を果たしたら、アメリカそっくりだった。これは最悪の冗談ではないのだろうか。

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この記事へのコメント

2007年06月06日 05:20
 いまは本心を隠しているんでしょうね。恐れているのは参院選です。橋本内閣のように、参院選で出鼻をくじかれて短命政権で終わる悪夢を避けたいのでしょう。
 本心は、戦前回帰なんでしょうが、その戦前がまた複雑で、戦前のどの時代にまで戻りたいのかは、わかりません。いずれにしても、参院選の結果待ちです。ここでこければ、レジュームチェンジはまたしばらく、日本人の記憶細胞から消える。
2007年06月06日 23:57
罵愚 さん
安部氏のイメージするものは戦前回帰だけではないでしょう。どの時代かを論じるのは意味がないのでは。
あなたは何を望んでいるの?
2007年06月07日 04:36
 わたしがなにを望んでいるかは、本題とはちょっと飛躍するのでエスケープとして、安倍さんのイメージが戦前の歴史のどこにもなかった新種の社会というのは、アリだと思う。
 しかしもしもそれが、現行平和憲法の9条だけを変更するマイナーチェンジだとしたら「戦後レジュームからの脱却」は看板倒れですね。あるいは、かれの戦後レジュームとは、防衛体制だけだったのかなぁ?
飼い犬に手をつかまれた男
2007年06月08日 12:55
レジームなんて言わないで「戦後体制からの脱却」って言ったほうが分かりやすいのに。
戦後だって良い時代は有ったのに、(冷戦を除けば)
2007年06月08日 17:08
 いやぁ、左からながめれば米帝の植民地だし、右からみればアカ帝の侵食で、国内冷戦は終わっていないのかも…
飼い犬に手をつかまれた男
2007年06月08日 20:08
自民党の中にも米国の植民地と言ってはばからない議員もいますよ。資本主義も各国様々だし社会主義(共産も含めて)も色々だし、右とか左とかあんまり決め付けるのもどうかと思いますよ。
2007年06月09日 03:41
 いやぁ、べつに左右識別にこだわっているのではなくて、あなたの「戦後だって良い時代は有った」の、真意をはかりかねているだけのことです。戦後のどの時期のなにが、それに該当するんだろうか?っていう疑問です。誤解しないでくださいよ、だからといって、戦後は全部ヤミだった、なんて、戦後暗黒史観をいいだすつもりもありません。
 戦後レジュームの定義と評価かなぁ…
戦後レジーム
2007年06月27日 19:43
「戦後レジームからの脱却」とやらを
素直に考えたらこんな感じ?
平和、自由、民主主義からの脱線
誰も、こんなフツーのことは期待していまい(←もともと何も期待してないよ、というツッコミはナシ)。
ここは一発、語呂合わせに賭けてみるか。
せんご、せんご、せん、せん・・・
千三政治家からの脱走
・・・内容が、全然、
関係なくなっているではないか!
もっと、アベちゃんのやったことに沿って考えないと。アベちゃんがやったことというと
偉大なおジイちゃまに憧れつつろくなことが思いつかないのでクソのような言葉を垂れ流し
クソの役にも立たん法案を押し通し・・・。
おじいちゃんの時代に戻りたいクソヤロー?
クソ、クソ、クソ、ふん?
先祖返りサルの脱糞
・・・自分で書いておいていうのもなんだが
これは、あまりに下品だ。。。。
が、ここまで来たら、後には引けない。
やけくそで、突っ走るしかあるまい。
3つまとめて。
先祖返りサルの脱糞で
うつむく国になってしまったニッポン。
この上、自分だけ勝手にイクなんて、サイテーッ!
2007年06月27日 22:04
戦後レジーム さん
やけくそのいささか下品なコメント有難うございます。
千三とはセンミツ、せんだみつおの事ですか?
私のブログでの新しいキャラなのでまたのお越しをお待ちしています。

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