朝ドラ「純情きらり」について

 「純情きらり」のいいところはなんと言っても主演の宮崎あおいだ。その明るさとひたむきさだ。インタビューを見たことがあるのだが、当然現代の人らしいし、第一髪形が違う。ドラマの中の有森桜子は演じられたものなのだ。それをそのまま楽しめばいいのだろう。
 連ドラでも他の局などでもこの時代のドラマは数多く作られている。内容的には余り変わらないと思うが、最近少なかった中で注目してしまう。社会の右傾化が言われ、首相の靖国参拝以降以前だったら即辞任と言うような発言がまかり通っている時代に、以前と同じ内容でもこの時代を描くのは勇気が要ることだと思う。まして自民党有力議員から圧力があるとも言われるNHKだからなおさらだ。
 ドラマは当時では珍しいクラシックやジャズを、有森家で鑑賞する所から始まる。むろん庶民から見ればかなり余裕のある家である事も確かだ。しかしその先でクラシックをやるにはその裕福さはまったく格が違うと言う事も表現する。このあたりの格差の表現は理解されているかは別にして、良く語っていた。
 政治的な部分は、共産党活動や、治安維持法適用の場面だ。「アカ」は「こわい」と言う当時の感覚そのものなのだが、共謀罪が議論されているこの時代、受け止められ方が心配なところがある。この「こわい」と言うのは複雑なものを含むのだが、それは表現されていなかったので危険性を感じた。
 しかし桜子の姉の笛子先生に対する教育内容干渉に対して、笛子先生が最後の授業を行いかなり長い演説をぶつ場面。教育の自由、人の心の自由を説くその演説は、教育基本法を議論する国会、どこかで読んだ今の「国会は戦前の国会か」と言わしめた国会の議員たちに聞かせたいものだった。
 続いて達彦に来た赤紙はまさに「赤い紙」として写し、それを受ける人たちの決して歓迎していない気持ちをきちんと表現していた。また出征する時には「立派に命を国に捧げてきます」と言うしらじらさもきちんとやった。一方当時あった在郷軍人会、青年団など徴兵を前向きに受け止めた人たちも居たことを表現しないのかなとも思った。
 この二つのエピソードは過去にいくつも見た描き方なのだが、「国に命を捧げたひと」、「国のために死んだ人を国が祀るのは当然だ」とか「愛国心を教えない国家など無い」などと散々聞かされている現代では注目してしまう。

 二人のピアニストに思うの朝ドラ「きらり」を見て を読んでいろいろ考えていたら、私の様々な戦争体験エントリーにコメントを頂いた。「戦争に限らず、「体験」というものは、知識とは違って、その人にとっては全宇宙の歴史の中で、ただ一度の重いものだと思います。」その通りだと思います。しかし「その人にとっては」を明確に認識しておく必要があります。世の中には多くの人がおり、多くの「体験」が存在し、すべての「その人にとっては」が等価値であることを認識する必要があります。
 そして歴史とはその等価値の人生の集大成なのです。決して一部の人の人生を集めたものではないことです。
 ドラマなどで示される人生。戦争未亡人の人生、やむなく夫の弟の嫁になった人生、空襲や原爆で家族をなくした人生、すべて重大な人生です。しかし他の人生も沢山あったのです。記録に残りやすい内地の人生だけがあの時代の人生ではないのです。
 例えば男は徴兵により、兵士となってみんなの前から消えるが、そこから男の新たな人生が始まる。軍隊の中での男の人生はドラマでは語られない。日本の軍隊での日常的な暴力、兵士の命を軽視した作戦計画、当時の戦闘の現実、「戦争犯罪」の現実、そのような事は本や文献で出てくる事はあっても、ドキュメンタリーで語られる事はあっても、ドラマでは出てこないのです。
 沖縄で死んだ多くの住民の人生、満州で死んだもしくは命からがら逃げた人たちの人生、シベリアに抑留された人たちの人生、サイパンで追い詰められて死んだ人たちの人生、すべて等価値で語られなければならないのです。

  「純情きらり」を賞賛すると共に、他の多くの人生にも思いを馳せたいと思う。


 

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