「格差社会」についての毎日新聞の論点

 いつものように3人の意見が掲載されている。

大竹文雄氏 大阪大学(労働経済学) 実質的な拡大はない
統計上の拡大は高齢化による所得格差
絶対的貧困に陥らぬ制度・教育論じよ

 まさに政府の主張そのものである。小泉首相の演説で耳がたこになっている。政府の統計に異論を唱えるだけの論拠がないのが悲しいところだ。論拠で面白いのは高齢化による格差拡大は影響大といっているが、若年層の格差拡大の影響を論じないことだ。
 その上で格差拡大ではなく、格差拡大感すなわち思い違いだと断定するのである。
 論理的には事実がなく、人々が事実に反したと思えることを言い立てるときには妄想と決め付けるであろう。だから格差が拡大しているかと言う事実の検証が最重要なのであろう。
 労働経済学者も検証に参加せねばならない専門家だろう。格差拡大感を論じるのではなく、統計の妥当性について論じるべきであろう。

竹内洋氏 関西大学教授(歴史社会学) 非エリート文化の兆し
戦前は小さな立身出世でも希望持てた
格差にどう対処するかの文化こそ大事

 戦前の日本社会を描く。多数の下流層、少数の上流層、戦前は格差の大きな社会だった。下流の人々は最貧困の人より上に上がること(小さな立身出世)で満足していた。格差社会の中の庶民の矜持と誇りがあったという。また戦後の中流意識についても、欲望が果てしなく開放された結果と言う。庶民は清貧と言う言葉を持ち、豊かでなくとも卑下するなと言う。
 戦前の日本社会は大正から昭和の恐慌期を経て格差が広がったと認識している。昭和の青年将校たちが昭和維新を主張した遠因に農村の極貧があったことは共通認識だと思う。これを抜きに戦前の世界を礼賛するのだろうか。最も格差のひどい時期に言及し、貧しい人たちに気持ちや文化をもって対処せよと言うことは、今後格差が拡大し沈んでいく層に対して文化で乗り切れと言うのか。
 競争社会への警鐘なら分かる。競争に走らなくても、その結果貧しくなっても気持ち一つで幸せになるという主張も理解できるが、歴史学者であるなら、貧しさのゆえに子供を売り、海外移民をして重労働をした歴史を無視できるのだろうか。
 自身および自身の一族は競争を止めて下層に移行し、高尚な文化を持って幸せに生きていくのでしょうね。

杉田 俊介 障害者サポートNPO職員 若年層に不安と焦り
個人能力・努力不足では説明できぬ
フリーターなど当事者を交えた議論を

 「格差は社会全体が許容し得ないほど拡大しているかどうか」といった議論もあるようだ。だが社会が許容しようが、本人にとって「許容し得ない」状況に置かれかねない人々はいる。
 という認識からこの意見は出発している。私のこの意見、認識に賛同している。

 格差は拡大していないと論じる人や、下層の人は文化で乗り切れと論じる人にどのように働きかけていくかが課題であろう。
 自称「ヒラリーマン」の杉村太蔵氏が小泉チルドレンでなくなれば力になってくれるかも知れない。

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