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zoom RSS 安保法制と日米ガイドラインは日本の抑止力を高めない

<<   作成日時 : 2015/08/17 01:33   >>

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 出来るだけ多くの人に読んでほしいと思うものなので長すぎると思いますが引用しました。

 ダイヤモンドオンラインにあるものです。(上)がこちら (下)がこちらです。

かなり分りやすいですが、前提となる知識が若干必要かも知れません。
国際連合憲章  
第51条〔自衛権〕
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国が措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約 
第五条
 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

新たな日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)全文 特に C 日本に対する武力攻撃への対処行動
日本は、日本の国民及び領域の防衛を引き続き主体的に実施し、日本に対する武力攻撃を極力早期に排除するため直ちに行動する。自衛隊は、日本及びその周辺海空域並びに海空域の接近経路における防勢作戦を主体的に実施する。米国は、日本と緊密に調整し、適切な支援を行う。米軍は、日本を防衛するため、自衛隊を支援し及び補完する。米国は、日本の防衛を支援し並びに平和及び安全を回復するような方法で、この地域の環境を形成するための行動をとる。


安保法制と日米ガイドラインは日本の抑止力を高めない(上),(下)


──柳澤協二・国際地政学研究所理事長
やなぎさわ・きょうじ
1946年生まれ。東京大学法学部卒業後、防衛庁(現・防衛省)入庁。防衛審議官、運用局長、防衛庁長官官房長、防衛研究所所長などを経て、2004年〜09年、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)。小泉・安倍(第1次)・福田・麻生政権で自衛隊イラク派遣などに関わる。著書に『亡国の安保政策』、『検証 官邸のイラク戦争』、『亡国の集団的自衛権』など。
いよいよ今国会最大の焦点である安保法制の審議が始まった。具体的には関連法10本を束ねた「平和安全法制整備法」と「国際平和支援法」の2本立て。集団的自衛権行使を可能にするなど、戦後続いていきた安保政策の大転換だが、法案はいかにも分かりづらい。
元防衛官僚で、安保政策の専門家である柳澤協二氏に、安保法制で何が変わるのか、そしてその問題点は何かを聞いた。柳澤氏は4月27日に合意したガイドライン(日米防衛協力のための指針)を読めば、その目指すところが分かるという。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集委員 原 英次郎)

アメリカとの公約が先行
自衛隊・米軍の平時からの一体化が進む
――まずガイドラインと安保法制の、特徴と評価を聞かせてください。
 大変驚きました。
 手法そのものが、先にアメリカで事実上、公約し、夏までに法案を通すような話までしてしまうというものでした。
 そうした政治的手法もさりながら、やはり内容的にアメリカとの公約先行型になっている。どこでそう思ったかと言えば、ガイドラインには「平時から利用可能な同盟調整メカニズムを設置し、運用面での調整を強化し、共同計画の策定を強化する」と、はっきり書かれているからです。

 もともと米軍と自衛隊、特に海上自衛隊は、一体化が進んできています。共通のデータリンクに入っていますしね。それはしかし、建前上は日本有事を前提にして、同じネットワークの中に入り、共同作戦ができるようにしていたわけです。だから実は、運用面ではほぼ完全にアメリカ軍との一体化はできているのですが、それに加えて今回は、平時からの調整メカニズム=政策面での一体化がはっきり書かれたということですね。
 特に注目すべきは、共同計画を策定すると書いてあることです。いままでは共同計画というのは、検討の対象であって策定ではありませんでした。実際にいろいろな事態が起きて、そこでの基本計画を作り、それが日本側の閣議決定・オーソライズ(承認)の対象とされてきた。
 今回は閣議決定の対象にはならないが、2+2(日米の外務大臣と防衛大臣)で事実上オーソライズするような書きぶりになっている。そうすると、前回までのガイドラインは、最初のものが日本有事を、1997年のものは朝鮮半島有事を対象にと、事態が特定されていたんですけれども、これからは世界のあらゆる事態が対象になる。
それらの事態をどう想定するかは分からないけれども、中東のISIL(イスラム国)とか、ペルシャ湾であればイランとの戦争、それからアフガニスタン、マラッカ海峡、南シナ海と、シナリオごとに計画を作っていくことになると思います。ただし、そういった計画は基本的にはオープンにされませんから、日米で計画を作り安保法制に沿って実際に自衛隊を出動させる際の国会承認の段になって、初めてそのエッセンス――全貌ではなく――が出てくる。とにかく先にアメリカとの合意ありき、という運用になってくるわけですね。
 その段階で国会に出したところで、1週間で議決しなくてはいかんと法案に書いている。しかも、アメリカとじっくり共同計画を練っているのですから、いざというときに、「あの計画通りやろう」と言われたら、日本側は断れないでしょう。
 手続きのみならず、ガイドラインの内容自体でもアメリカとの公約が先行して運用されていく、そういう形になっているのが、ものすごく大きな特徴だと思います。

実は大きなカギとなる
自衛隊法95条の改正
 平時からの取り組みについても、米国のカーター国防長官は、正直にはしゃいでいて、これで南シナ海で中国を牽制できると言っています。本当の狙いはそこだと思うんですが、ガイドラインでは平時から有事まで、海洋安全保障が強調されている。海洋安全保障とはインド洋から南シナ海に至るシーレーン防衛のことだと思いますが、その中で非常に特徴的なのは、「武器等の防護のための武器の使用」を定めた自衛隊法95条(※1)を改正して、米軍の船を守れるようにすることです。
 95条の武器等防護の規定というのは平時の権限であって、かつ部隊の現場の判断になる。法文上も、自衛官は武器等を警護するに当たり、「合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる」と書いてあります。改正法案では、米軍からの要請を受けて防衛大臣が承認するという手順が入るようですが、それにしても実際に撃つかどうかは、現場の判断にならざるを得ない。しかも平時から使えるわけです。平時と言っても、そこそこ状況は緊迫しているときの話ですから。
 それから重要影響事態(※2)でも、それができるわけですね。もちろん存立危機事態(※3)になっても、武器等防護はずっと生きている。これはものすごく大変なことで、実はこれで米海軍と海上自衛隊が同じROE(交戦規程)を持ち、平時からの共同パトロール、重要影響事態における情報交換、補給活動をやることになります。その際、本当に相手が撃ってきたときに、自衛隊が応戦する。緊迫した事態で応戦するということは、自衛隊も参戦するということです。
(※1)自衛隊の武器使用の基準を定めた条文で、「自衛隊の武器」などを守るために、武器を使用することができる旨を定めている。
(※2)そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至る恐れのある事態等、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態。
(※3)我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から根底から覆される明白な危険がある事態。

今までとは全く違う世界に踏み込む
自衛隊の活動が質的に違ってくる
 これは今までとは全く違う世界に踏み込んだことになると思うんですね。だから、私は言わば自衛隊法95条の改正によって、シームレスに米中の紛争に自衛隊が入っていく、そういう法制だと思います。
 キーワードは「平時からの武器等防護」と「海洋安全保障」で、その意味するところは中国海軍の牽制ということになる。それがいわばグレーゾーン(※4)の話ですね。グレーゾーンから有事まで一貫して使えるのが、自衛隊法95条の話なのです。
――99年にできた周辺事態法の改正法案が、重要影響事態法案です。周辺事態法では「我が国周辺における」という限定が付いていましたが、重要影響事態法案ではこの限定が外されています。
 ガイドラインでも、重要影響事態は「地理的に定めることはできない」として、「周辺」という限定をやめてしまいました。しかし、法案にも重要影響事態とは「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至る恐れのある事態」という例示がある。
 実際に日本から遠いところで起こったことが、どのようにして重要影響事態に至るのか、その判断基準が分からないんですね。ということは、逆に政府が重要影響事態と認定すれば――もちろん自衛隊は、とりあえずは後方支援ですが――いつでも米軍と一緒に作戦ができるということです。
 実はこれはとてもややこしいのですが、安倍総理がおっしゃるペルシャ湾のホルムズ海峡の機雷は、存立危機事態ではなくても重要影響事態にはなり得る。ホルムズ海峡の機雷が重要影響事態であれば、南シナ海のシーレーンの武力衝突も重要影響事態になる。かなり幅広いものになるということですね。
 そこで自衛隊はいつもアメリカ軍と一緒にいて、かつ、後方支援と言っても新しい自衛隊法95条の武器等防護によって、いつでも参戦できる体制で出て行くわけです。だからこれまでとは、質的にオペレーションが違ってくると思います。
(※4)自衛隊に防衛出動が命じられる有事とまではいかないが、治安維持を担う海上保安庁や警察では対処できないような状況のこと。

相手が恐れないと抑止にはならない
逆に巻き込まれるリスクが高まる
――安倍総理は米軍との協力関係を強化することが、抑止力を高めると盛んに強調しています。
 総理は5月14日の記者会見でも、アメリカの船を守れば抑止力が高まって、戦争に巻き込まれることは絶対にないとおっしゃっている。そこは全く論理的におかしいと思っています。
 アメリカの船を守るということは、アメリカの船に対する防護力は高まりますから、その船に対する攻撃は抑止されるかもしれない。ガイドラインには情勢緊迫時にデモンストレーションの演習をやれば、抑止力が高まると書いてあります。結局、これを使う場面というのは、アメリカ海軍と中国海軍が対峙している、そんなところに自衛隊も入って、一種の威嚇的な演習をやるわけです。
 そういう形で相手を黙らせようという発想ですね。相手が恐れれば抑止になるかもしれないが、相手が恐れなければ抑止にならないし、本当の戦争になってしまうかもしれない。そのような訓練や演習は一種の挑発行為でもある。安倍総理がおっしゃっているのは、そうやれば中国が必ず恐れるからという前提に立っているんですね。
 もし中国が一戦交えてもいいと覚悟を決めていれば、抑止できません。緊張を高めたが故に、現場の誤った判断で戦闘が始まるというリスクもある。だから、こういうことをやれば抑止力が高まって、戦争に巻き込まれないというのは、むしろ逆だと思います。やれば、巻き込まれるリスクがものすごく高まる。そうした緊張した現場に自衛隊が入っていって、武器を使うということを言っているのですから。
 つまり安保法制とは何かと言うと、ガイドラインを実現するための法制です。安保法制はあちこちに飛んで、非常に分かりにくいので、むしろガイドラインを読むほうがいいと思います。何をやろうとしているのか、全体的な流れが非常によく理解できる。
――ガイドラインが米軍との協力を定めたものであるのに対して、国際社会への協力として海外で他国軍の後方支援などを定めたものが、新法である国際平和支援法と国連平和維持活動(PKO)協力法改正案です。ここでも戦闘に巻き込まれるリスクが高まるのでしょうか。
 やはりポイントは、他国軍隊への後方支援のときに――重要影響事態でも同じですが――戦闘の現場でなければ行けるし、弾薬も提供できることです。これもこれまでとは違った質的危険を伴います。

自衛隊のリスクははるかに高くなる
否応なしに「戦闘」の世界に
 今までは自衛隊の活動できる範囲を「非戦闘地域」に限定していた。しかも、輸送と言っても拠点輸送しかやっていない。前線部隊にまで弾を運べるというのが、今度の法制ですから、そういった活動をすれば、他国の軍隊と一体化するかどうかは別として、一言で言えば敵のターゲットになるということです。
 非戦闘地域というのは、一応、敵が出てこないことを前提にしていたわけです。しかし、新法が定めているように、現に戦闘が行われていない地域ならば活動していいということは、敵は残存している可能性があるということなんですね。敵がいるところでそういった活動をすれば、まず狙われるのは兵站部隊ですから、非常に危険になる。
 この場合の武器使用の基準は「自己保存のための武器使用」しかないのですが、それで襲われる確率が高ければ、自己保存として戦闘に入っていく可能性も高い。総理の説明では戦闘が起こりそうになれば活動を中断すると言っているけれども、中断するのは前線部隊を見殺しにするということですから、中断なんかできないですよ。やはり自分も応戦して、その場に留まらなくてはいけなくなります。
 もう一つは、国連統括外の活動も支援の対象に入っているということが、何を意味しているかです。イラク戦争後のイラクの治安維持は国連の統括外でした。アフガニスタンのISAF(国際治安支援部隊)も国連決議はあったけれども、国連のオペレーションではなく、あくまでアメリカ軍、NATO軍の統括の下でやっていた。今回の法律ではそういったこともやれるようになるということです。これはそれ自体でものすごく危険ですし、さらに武器使用基準も「任務遂行のための武器使用」ができる。
 PKOで自衛隊は、要員を防護するための武器使用、通常Aタイプと言われる「自己保存のための武器使用」しかできなかったけれども、今度は自衛隊がある目的地に行こうとして、そこに立ちふさがるやつがいれば、武器を持って追い散らすような、「任務遂行のための武器使用」、通常Bタイプと言われる武器使用ができる。これは何だと言ったら、戦闘ですよ。こんなことをやったら、相手も殺すし、こちらも死ぬということです。だからこれもこれまでとは質的に違う。
 質的に違う結果どうなるか。Aタイプに加えて、いわゆるBタイプの武器使用ができるとなれば、各国の軍隊と武器使用基準が同じになる。先ほどのグレーゾーンにおける例では、自衛隊法95条の改正で米海軍と平時のROE(交戦規程)が共通化すると指摘しましたが、こちらもPKOの陸上活動で、普通の軍隊と同じROEが持てるようになる。結果、殺したり殺されたりということになるわけです。
 当然、やられるリスクがこれまでとは比べ物にならないくらい高まります。


前回に続き、元防衛官僚で安保政策の専門家である柳澤協二氏に、今国会の焦点である安保法制のポイントと問題点を聞く。柳澤氏は、今回の法制案は内容的にも手続き的にも大きな欠陥があると指摘。さらに、そもそも安倍政権の考え方は日本の抑止力を高める、すなわち日本を守ることにはならず、むしろ危機を招くと説く。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集委員 原 英次郎)

武力行使の基準を
書かないのは欠陥法案
――昨年、集団的自衛権の行使を認めるかどうかの議論がなされたときに、行使が必要な事例として、政府・与党はいわゆる15事例を挙げました。しかし、米軍の船が避難する日本人を運ぶなど、ガイドラインに照らしても現実性のない事例が多いという強い批判も出ました。その最も重要な点については、依然、明らかにならないまま議論が進んでいます。

 そこが今回の安保法制の本丸で、存立危機事態(※)とは何ぞやということですね。その点については昨年7月の閣議決定から9ヵ月も経って、何も具体化されていない。
 これは日本が日本以外で武力行使していく際の基準の話です。国会承認を得るからいいんだと言っても、国会承認は事後承認でもいいんですから、やはりどういう基準で武力行使するのかというところを明確にしないといけない。
 今までの憲法解釈や法律によれば、「我が国に対する武力攻撃があった場合には」という非常に分かりやすい基準があったわけです。今度はそれがないので、どうすれば存立危機になるかということを法律にブレークダウンして書かないと、結局、「政府が勝手に判断していいよ」ということにならざるを得ない。
 その意味では、武力行使を許しておきながら、その基準を書かないというのは、法律として欠陥だと思います。
(※)我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から根底から覆される明白な危険がある事態。集団的自衛権の行使が可能となる、3つの要件の1つ。
もともと日本が攻撃を受けていないのに、存立危機事態になるということはあり得ないので、政府は基準を示せないんですよ。あり得るというなら、それを法律にしっかりと書かないと。武力行使の基準を政府の判断だけに委ねるのはおかしいでしょう。
 そうはならないと言うのなら、どうすれば政府の恣意的判断にならないのかという基準を示せば分かることです。これまでは日本に対して武力攻撃があるということが、武力行使の基準であり、存立危機の基準でした。武力攻撃がないけれども、存立危機があるとしたら、今度はその判断基準を示さないといけません。

安倍政権のやり方は
民主主義の存立危機事態
――集団的自衛権の行使容認も「解釈改憲」でしたが、今回のガイドライン(日米防衛協力のための指針)の改定も「解釈条約改定」とも、言えますね。
 本来なら、憲法も、日米安全保障条約(日米安保条約)も変えなくてはいけません。アメリカが日本を守るのは安保条約上の義務ですが、日本からはるか離れたところでアメリカの船を守ることは、条約上の義務ではないのですから。
 例えば、米韓安保条約はアジア・太平洋地域でいずれか一方への攻撃を対象にしている。だから、韓国はベトナム戦争にも参戦したわけです。けれどもイラク戦争には軍隊を出していない。イラクはアジア・太平洋地域ではないからです。
 日米安保条約は、対象を「日本国の施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」と定めている。その外の地域で起きたことについてどうするのか、ということについては、日米安保条約は何も決めていません。アメリカは極東の安全のために日本の基地を使って行動すると書いてあるだけです。
 日本がどうするかは全く書いていない。決めているのは、日本は米軍に基地を使わせるということなんです。基地を使わせる以上のことをやろうとすれば、本来なら、安保条約も変えなくてはダメです。
――条約は国会でも議論して批准した国同士の約束です。憲法解釈も同じですが、それを勝手に解釈してどんどん拡大していくのは、立法府である国会の無視、政府の暴走ではありませんか。
 そうですよ。これは民主主義の存立危機事態なんです。ただ安倍政権の論理を一言で言えば、国民の生命を守るときに、民主主義など守っていられるかということでしょう。しかし、国民が民主主義が破壊された国家を望んでいるかが、まず問われなければいけません。民主主義の国を望むのか、それとも自分たちが守ってもらうためには、民主主義を手放してもいいのかということが、国民にも問われている。

攻撃を受けるリスクも
覚悟で考えるのが抑止力
――国会で安保法制の審議が始まりましたが、論じるべきポイントはなんでしょうか。
 一つ目は、今度の法制によって武器使用が広がり、アメリカの戦争に巻き込まれるのではないかということです。二つ目は海外での武器使用が拡大することによって、自衛隊が非常に危険になるのではないかということ。その裏返しですが、自衛隊が現地の勢力と敵対することによって、日本人がテロの対象になるリスクも高まるわけです。三つ目は手続き論です。日米安保条約を変えなくてよいのか、変える前に、なぜアメリカと約束してしまったのか。
 さらにもう一つ、安倍総理の発言に関することですが、抑止力とは何か、です。そこをよく考えないといけない。
 抑止力とは、相手が不当な攻撃を仕掛けてきたら、報復する意志と能力があるということです。言い換えれば、本当に攻めてきたら犠牲も覚悟で戦うぞということなんですね。そこのところを言わずに、抑止力が高まれば戦争になる可能性はほとんどないと、総理はおっしゃっている。
 抑止力と言うからには、日本が攻撃を受けるリスク、それがあったとしても戦うんだと、はっきり言わないといけない。抑止力を高めても、相手も抑止されたくなかったら、もっと強くなろうとするわけですから。抑止がいずれ破られるかもしれない。破られたときにどうするかを考えないと。このところ日本の防衛力は量的には全然拡大していないのですから、今度のようにアメリカの船を守ることによって加算される抑止力とは何かということをもっと考えないといけません。結局、抑止力、抑止力と言うけれども、いざとなればアメリカが出てきてくれないと困ると言っているにすぎない。
 日米が一体になって中国を抑え込み、いざ何かあれば中国をやっつけるぞというのが、日米同盟の抑止力なのに、中国と戦争になった場合に、日本だけでは勝てないからアメリカに出てきてもらおうとする。アメリカが出てきてくれるにしても、アメリカには直接、戦術ミサイルは届かないけれども、日本には届く。やはり日本が最前線にあることの意味を考えないといけません。アメリカ本土はやられなくても、日本はやられるわけですよ。日本が壊滅してもアメリカは中国には勝つというのが、日米同盟の抑止力ということなんです。
――アメリカは今回のガイドラインの改定と、安保法制を歓迎しています。
 それはアメリカは歓迎しますよ。平時からアメリカのコントロールのもとで、日本がアメリカの注文通りのことをやってくれるのであれば、歓迎するでしょう。だがそれは日本が中東で血を流さなければアメリカが助けに来ないとか、血を流せば助けに来るとかというバーターの話ではないのです。
アメリカは自分の国益にとって、日本を失ってはいけないから日本を守るはずで、日本がアメリカのためにどこかで血を流すかどうかとは別問題です。もちろん日本が攻められれば日本は血を流すでしょうが、それは個別的自衛権の話ですからね。そこを混同している。日本の防衛に際して、日本自身が血を流さないとアメリカが助けてくれるはずがない。それはその通りでしょうが、それは個別的自衛権の問題でしょう、ということです。

アメリカは自分の望まぬ
戦争には巻き込まれない
――日本サイドには、日本の安保政策にアメリカを巻き込むためには、日本が血を流してアメリカと対等になることが必要だという意見もあります。
 アメリカは巻き込まれませんよ。自分が主導権を握っているわけですから、自分の国益にとって都合の悪い紛争には巻き込まれません。ただ、アメリカにとって日本はすごく大事です。日本を失ったらアメリカは太平洋でプレゼンスを示すことができなくなります。だから、アメリカにとって、日本、もっと言えば在日米軍基地はアメリカ本土と同じくらい重要なんです。血を流さないと守らないと言っている場合ではないんです。日本が血を流そうが流すまいが、アメリカは日本を助けざるを得ません。
 むしろアメリカが望まないタイミングで、日本が先走って中国とぶつかってほしくないとは思っているでしょう。今度のガイドラインで平時からの政策調整をやると言っていますから、そこでアメリカのコントロールが一段と強まったということで、歓迎しているのだと思います。安倍総理の発言でも、中国という言葉が一言も出てこない背景には、アメリカのそういう発想に合わせているという側面があると思います。
――総理は抑止力を強調しますが、抑止力と言うからには抑止の対象があるはずです。しかし、抑止の対象は明確でないし、その議論も深まっていない。それが明確にならないと、安保政策が妥当なものであるかどうかも判断できないはずです。
 そうです。どの国の何を抑止するのかは、ものすごく重要です。島を分捕りに来ないようにするのであれば、それはとりあえず海保(海上保安庁)と自衛隊の仕事です。ガイドラインにも島嶼防衛は日本がやると書いてある。それを越えてアメリカ本土にミサイルを撃ってくるのを抑止するのであれば、アメリカ自身の役割です。
 中国が海警(中国公安辺防海警部隊)を出してフィリピンやベトナムにいじわるすることを抑止しようとしても、それは抑止できていない。海警は軍隊ではないからです。中国が軍事的な大国になることを抑止できるかというと、それもできない。そのこと自体は何ら違法ではないからです。何を抑止したいかはっきり言わないといけません。しかし、総理の説明ではアメリカの船に対する攻撃を抑止したいことは分かるが、それでどうして日本の抑止力が高まるのか。むしろ日本への攻撃を誘発する恐れだってあるということになってしまいます。

中国に対して日本から
事を荒立てるべきではない
――最近の南シナ海における中国のやり方を見ていると、手薄なところには、力で進出してきているように思えます。どう対処すればいいでしょうか。
 日本自身の防衛が手薄になってはいけない。そのうえで日本から事を荒立ててはいけないということです。日中の2国間の話であれば、まだコントロールできるんです。ですから、他の国との関係、しかも軍事的な関係にまで手を出していくのは、やめた方がいい。
 中国にはあくまで“ルールを守ろう”と言い続ければいいことであって、南シナ海にまで自衛隊が出て行って、アメリカと一緒に中国をけん制するというのは、中国から見れば敵対行為になります。日中関係はおかしくなりますよ。日中間ではテンションを下げて、これ以上関係が悪くならないようにするのが一番大事です。そういう意味で余計なことをしない方がいい。
 今はまだ中国の今後の方向性も不透明だし、アメリカ自身の意志も不透明です。だから大風呂敷の約束はしない方がいいということです。
――そう考えると、安倍総理は我が国の安全を高めることが目的だとおっしゃるが、本当は何を実現したいのか、よく見えませんね。
 アメリカと対等になりたいという思いは、総理の祖父の岸信介さん(元首相)の時代からあったんでしょうね。しかし、アメリカ追随を深めていくことで、どうして対等の関係になるのかがよく分からない。
 アメリカは今度のガイドラインでも、ものすごくはっきりしています。日本を守るのは日本が主体となってやる仕事だと。アメリカ軍は自衛隊を支援し補完はすると書いてあるけれども、何をするか具体的には全然書いていないわけです。
 覇権国アメリカにとって許せないことは、二つあると思うんですね。一つは自分に代わる覇権国が現れること。もう一つは、戦争をやるかどうかは自分が決めるのであって、自分がその気がないときに、よその国が起こした戦争に引きずり込まれること。
 だから、これさえやればアメリカが必ず助けてくれるなんて考えるのは、ナイーブに過ぎます。日本の防衛は日米安保条約上のアメリカの義務として書いてあるんだから、それはちゃんと義務を守れ、守らないのであれば基地は使わせない、という話です。

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