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help リーダーに追加 RSS 法人税率引き下げで国民は幸福になるのか

<<   作成日時 : 2007/02/12 22:45   >>

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 毎日新聞の闘論で法人税引き下げ論がでている。
論者の一人は東大教授・井堀利宏氏(いほり・としひろ)
 米ジョンズ・ホプキンス大博士課程修了、内閣府総括政策研究官などを歴任。54歳。
です。著書も多く経済学、財政学が専門のようだ。

対するは連合会長・高木剛氏たかぎ・つよし
 東大卒、67年旭化成工業入社。UIゼンセン同盟会長を経て05年10月から現職。63歳。
です。こちらはまともな論だから突っ込みは必要ない。



◇企業の海外逃避防ぐ 賃上げや雇用増促す−−東大教授・井堀利宏氏

 現在の法人税の実効税率約40%は国際比較で見ると高く、可能であれば引き下げるべきだ。減税は企業の投資意欲を刺激し、雇用拡大の意欲を高め、経済活性化につながるだろう。

 株主の意向など市場からの圧力が高まり、経営者は効率性やコストにより敏感になっている。国内投資の促進や企業の競争力確保の面でも、国際的な税率水準に合わせていく重要度が増している。国際化が進み、企業が投資先を自由に選べるようになった結果、他国より税率が高いと外国に逃げられてしまうからだ。

 日本は米独並みの約40%まで下げてきたが、もっと税率が低い中国(33%)や韓国(27・5%)、東南アジアが急成長してきた。今後も経済的な相互依存関係が深まることを考えると、アジアとの比較も重要になる。アジアは賃金や社会基盤などの経済環境が国ごとに異なり、税率が少し低いからといって、そこに本社や工場をすぐ移すという劇的な変化はないだろうが、経済成長に伴い税制の影響が大きくなる。

 そもそも法人税負担は、最終的に製品価格や従業員の賃金などに転嫁されるため、誰が負担しているのか分かりにくい。税の使い道に対し国民にもっと関心を持ってもらう観点からも望ましい税ではない。

 また、法人税のうち日本は約12%分が地方税。英仏で地方法人税がないなど、日本は地方法人税の割合が大きく、企業や工場が多い都市部に地方法人税の収入が偏る原因にもなっている。そこで、地方法人税を減税し、偏りが小さい地方消費税を増税すれば、自治体間の税財源格差の縮小を図ることも可能になる。

 「企業を優遇し、家計に冷たい」との批判もあるが、経営者への報酬や株主配当、従業員の賃金などを増やす形で、最終的には家計のメリットになる。そもそも、企業会計と家計が対立の関係にあると見るのは間違いだ。企業業績が回復しているのに賃金が上がっていないのは、国際化が進む中、労働も国際競争にさらされているのが原因で、企業への減税とは別の議論だ。企業が強くならず、日本経済全体が底上げしないと、税収は増えない。税収が伸びなければ、社会保障費などの削減を余儀なくされ、結果的に弱者に最もしわ寄せが及ぶ結果になる。
毎日新聞 2007年2月12日 東京朝刊

 簡単にまとめると次のようになるかな

日本の法人に対する税率は国際比較で高い。
税率が高いと企業が本社や工場を日本に作らなくなる。
税率が低いとその分を設備投資にまわし、雇用拡大をし、経済の活性化になる。
アジアは税率が低く、それとの比較は重要。
(経済発展すれば)経営者への報酬や株主配当、従業員の賃金などを増やす形で最終的に家計のメリットとなる。
労働者賃金は国際競争で決まっているので、税率とは別の議論。
企業が発展しなければ税収が増えず、社会保障費を削減することになり、弱者にしわ寄せが行く。

 日本の法人に対する税率は国際比較で高い。に対する高木剛氏の反論
そもそも日本企業の公的負担が重いのか、軽いのかの検証が不十分だ。企業負担は表面的な税率だけでなく社会保険料なども含めて検討しないといけない。ドイツが法人税率を引き下げる動きを見せているが、欧州は税率20%程度の付加価値税があり、消費税率が5%の日本と単純に国民負担を比較できない。「ドイツが下げるから日本も」ではなく、さまざまな要素を検討する必要がある。
 日本の税制度だけでも難しいのに国際比較はさらに難しい。ここに書かれているもの以外に、企業の経費算定方法がある。話題になっていた償却費の残余分を残すか否か、各種引当金、国際取引でのいくつかの取り決めなど複雑怪奇だ。ただ、財界も含めやかましく言うところを見ると税率は低いことはないのかもしれない。

アジアは税率が低く、それとの比較は重要。に対する高木剛氏の反論
最近は「税率の低いアジアと比較すべきだ」という主張もある。しかし、途上国は外資を導入して経済発展したいから税率を低くしているのであって、年金や医療、介護など社会保障制度は先進国に比べ整っていない。税は行政サービスとのバランスで決まるのだから、成熟度の低い国と比較するのは間違いだ。
 反論はその通りなのだが、企業から見ると税率が低いことには違いはない。中国やベトナムに中小企業までが工場などを移転する動きは止められないだろう。

税率が低いとその分を設備投資にまわし、雇用拡大をし、経済の活性化になる。
企業の行動としてはこれで正しいだろう。雇用拡大にはなるだろうが、単価の低い雇用拡大にしかならない。少子化傾向の中ではどこかで行き詰ることだろう。

(経済発展すれば)経営者への報酬や株主配当、従業員の賃金などを増やす形で最終的に家計のメリットとなる。
統計上の家計の中には経営者も株主も含まれるのでその意味では正しい。一般株主は増えていると言われているが、株の保有量はあまり増えていない。増えているのは海外投資家の比率だ。
普通に言われる「家計」は一般の国民の収入を言い、「従業員の賃金」が増えるかどうかがポイントなのだが・・・

労働者賃金は国際競争で決まっているので、税率とは別の議論。
ここで労働者賃金は税率と関係ないと言ってしまえば、上記の主張はおかしくないか。

企業が発展しなければ税収が増えず、社会保障費を削減することになり、弱者にしわ寄せが行く。
税率を下げて発展したときの税収と、税率を下げず現状ペースの発展をした場合の税収はどちらが多いのだろう。企業の多くは赤字で税金を少ししか払っていないので、大いに発展して殆どの企業が税金を払うようになる方が税収は多くなるのかもしれない。それを最初に論じるべきなのであろう。
 しかし、弱者の社会保障を人質に取るような発言は、品格にかけると思う。

 こんなことも言っている。
「そもそも法人税負担は、最終的に製品価格や従業員の賃金などに転嫁されるため、誰が負担しているのか分かりにくい。税の使い道に対し国民にもっと関心を持ってもらう観点からも望ましい税ではない。」
法人税負担の差は設備投資や雇用拡大につながっていると書いているのに、ここでは転嫁が出来ると書いている。製品価格に転嫁できるのであれば国際競争力はどこへ行ったのであろうか。
 今払っている税金だけでも国民は十分関心を持っている、持たねばならないと思う。
 法人が何故税金を払わねばならないのか、応益負担として考えるのか、負担できる存在が負担すると考えるのか、私にはその理論は良く分からないが、こんな議論ではないと思う。

 またこんなことも言う。
「また、法人税のうち日本は約12%分が地方税。英仏で地方法人税がないなど、日本は地方法人税の割合が大きく、企業や工場が多い都市部に地方法人税の収入が偏る原因にもなっている。そこで、地方法人税を減税し、偏りが小さい地方消費税を増税すれば、自治体間の税財源格差の縮小を図ることも可能になる。」
国と地方の税区分の議論だが、税金の再配分には地方交付税という方法もあり、企業の少ない地方では企業からの税収が期待できないことから、東京に集まる企業の税金を減らし、地方にまわせば良い。
 地方消費税は低所得者からも取る税金だ。再配分と言うか、地方との格差是正には色々な方法がある。この論理の飛躍はおかしいのではないか。


 労働者の賃金を引き下げ、中小企業からの仕入れ商品の値を引き下げ、得られた企業の利益は経営者や株主に配分されていることは最近よく言われる。
 株主に配当を出さなければ株が下がると言われているが、外国の投資家を呼込まなければ、過去からの慣習で低配当でやってきたではないか。外国の投資が必要なのだろうか。
 日本の低金利資金を外国が調達し、逆にそれを日本に投資していることも普通に言われている。(証券会社からドル建ての日本投資の勧誘を受けたことがある)金融におけるアメリカ支配のせいだろう。

 経営者と従業員の日本での給与格差は小さいと言われていた。この格差は、国際競争力とも税率とも関係はない。労働者側はまずこれに苦情を申し入れる必要があるだろう。

法人税の引き下げで幸せになるのは経営者や株主であることが良く分かる論だと思う。


 井堀利宏氏は東大教授で本も多数出しており、政府税調の委員だ。大学教授といえば、教養もあり専門分野の見識は高いものだと思う。しかも東大だ。 
 されど、これほど説得力のない議論しか出来ないのは、「法人税率引き下げで国民は幸福になる」がよほど困難なテーマのせいなのだろうか。

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